心エコー図検査は、常に動いている心臓という臓器を扱うため、エコー検査の中でも最も技術を要する検査です。ほぼ一定の質が担保されるCTやMRI検査とは異なり、心エコー図検査はその画質も計測値も担当する技師の能力に大きく依存します。そのため、施設間ではもちろん同じ施設内においても得られる検査結果が異なる、ということが起こってしまうのが心エコー図検査の大きな問題点です。臨床現場では心エコーレポートの結果によって患者さんの治療方針が左右されるため、常に正しい結果が求められています。

虎の門病院では心エコー図検査に携わる検査技師は約10名と多く、その業務も腹部や血管など他領域にまたがっており、心エコー専従の技師はごく数名です。
なおかつ、技師の経験年数も技術も様々なため、一人一人の撮像手順や計測法を統一することが課題でした。そこで、虎の門病院の心エコーチームでは、“心エコー図検査の標準化”に取り組んでいます。2019年5月より、(アメリカ心エコー図学会の)最新のガイドラインを遵守した院内での検査プロトコールを設け、撮像手順や計測を施設内で統一しました。さらに、エコー室に常駐する超音波指導医・専門医(常勤2名+非常勤1名)が、一検査ごとに技師と画像をチェックし、レポートの記載法を直接指導しています。

また、施設間での標準化にも取り組むべく、東京ベイ・浦安市川医療センターのエコーチームと合同で、「心エコー計測に関する勉強会」を開催しています。虎の門病院と東京ベイ・浦安市川医療センターはハートアライアンスとして循環器診療で深く連携しており、患者さんや医師が2病院間を行き来しています。その状況において、施設間でエコー画像の計測や解釈が異なっていることは、診療の質に影響を及ぼす問題であり、かつ医師や技師の手間も増やします。勉強会では、同一のエコー画像を用いて実際の計測や解釈を共有することで、心エコーレポートの真の標準化を目指しており、そこから医療の質向上や、心エコー医・技師の育成、働き方改革につなげていきます。

虎の門病院循環器センター内科 太田 光彦