私たち臨床工学技士で検討している標準化の一つに人工心肺システムの血液循環回路が挙げられます。この血液循環回路は施設によってチューブの長さや付属品、構成が異なり、同一である施設はほとんどありません。その背景には心臓血管外科医と臨床工学技士により、手術手技による工夫や安全性を高めるため、各施設がオーダーメイドでカスタムをしている事が理由です。実際に全国では数千種類もの血液循環回路が存在するそうです。私たちの3施設でも回路が異なります。回路の変更は人工心肺操作や手術手技にも影響が出る可能性があり、協議を重ね慎重に行わなければなりません。その中でまず着目したのが手術時の出血を回収する吸引チューブの色です。吸引チューブは3種類使用する事が主であり、それぞれ役割が視認出来るように色分けされています。標準化の第一歩として3施設の色の統一を検討しています。全国の使用状況をメーカーに確認すると、10種類もの色が使用されている事が判明しました。吸引チューブの色だけでもこれだけ多くの種類がある事に驚くとともに、回路全体ではさらに施設毎でこだわりがあるという事が想像できました。私たちは全国でも使用が多い色の採用を検討しております。また国内でも標準回路の提案がされており、そちらも参考の上アライアンスで検討した回路標準化の一例として報告していきたいと考えています。
聖路加国際病院 渡辺 竜徳